レポート
2024.11.15

甘いたれの「甲州ずし」 魚をおいしく食べる知恵

大きなネタに、つやつやとしたたれ😋🍣

 

1897(明治30)年に創業した甲府市中央4丁目の魚そう本店さんは、江戸時代後期ごろから甲府で親しまれ、「甲州ずし」などと呼ばれる伝統的なにぎりずしを今に伝えている。

市教委などによると、江戸時代、駿河湾で早朝に揚がった魚は、駿河と甲斐国を最短距離で結んだ中道往還を通って、一晩かけて甲府へ運ばれていた。冷蔵や冷凍などの保存技術がなかった時代。魚の鮮度が落ちてもおいしく食べられるように、ひと手間かけたのが、ネタに塗られたたれの始まりだと考えられている。
 

甲州ずしは1貫が大きいのも特徴。同店では、一般的なにぎりずしの2倍ほどあるシャリに、マグロやエビなどのネタを載せ、しょうゆと砂糖などを煮詰めたあまじょっぱいたれを塗る。すしおけに薄焼き卵で巻いた太巻きも並ぶ。

4代目の小沢宗一さん(68)は約40年前から店に立つ。「(甲州ずしは)たれがあるから、しょうゆがなくても畑仕事をしながら食べられる。かつては祭りの屋台などで家族が買って帰ったものが、各地で味の伝承になったのでは」と推測する。

 

山梨ならではの寿司として、現在は県外から甲州ずし目当てに訪れる客も多いという。小沢さんは「時代とともに変化する食もあるけれど、文化として甲州ずしを大切にして、先人の知恵を伝えていきたい」と話している。

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