海なし県産の塩を、新たな名産に-。
県立大の増田貴史ゼミは、温泉水を活用した塩づくりに取り組んでいる。山梨大准教授の調査で、早川町内の温泉施設で使われている温泉水が古代の海水であると分かったことから、地域活性につなげようと温泉水から塩を抽出。9、10の両日に開かれる文化祭で塩を使った軽食を販売するほか、宿泊施設や地域住民とも連携し、新たな名産品としての可能性を探る。
塩づくりに取り組んでいるのは、県立大の増田特任教授のゼミで学ぶ国際政策学部3年の山田乃愛さん(20)。地域資源を活用したものづくりを研究する中、本州中部を縦断する大断層「糸魚川-静岡構造線」上に山梨県が位置することを踏まえ、「山梨の土地柄を物語る資源を知ろう」と、4月、構造線が通る早川町でフィールドワークを行った。
同町大原野の温泉施設「ヘルシー美里」の温泉水がしょっぱいことに着目し、海水由来の温泉だと推測。全国の温泉水を調査する山梨大の中村高志准教授(地下水学)に問い合わせたところ、古代の海水だと分かった。中村准教授によると、早川町の温泉水は、古代の海水が海洋プレートの地下深くに浸透し、長い年月をかけ地表近くまで上がった非火山性の温泉で、「今後海水の年代特定を進めたい」という。
山田さんは温泉施設から100リットルをくみ出し、大学内で煮詰め、ろ過して約500グラムの塩を抽出した。食塩はミネラル成分が豊富に含まれ「ミネラルの甘みやにがりの苦みなど独特の風味がある」(増田特任教授)。分析会社での検査を経て、抽出した食塩が安全衛生基準をクリアしていることも分かった。
9、10の両日は、塩を使った塩昆布おにぎりとみそ汁のセット(各日限定50食、300円)を販売する。宿泊施設と連携しメニュー開発なども検討している。
山田さんは「地元の人も知らない資源を掘り起こし、広く知ってもらう機会になれば」と期待。増田特任教授は「地域住民とも話し合いながら、新たな名産として活用の方策を考えたい」と話している。