山梨市牧丘町柳平の琴川ダム(乙女湖)で特定外来生物コクチバスの生息が確認されたことを受け、2020年度から始まった、県や漁協などによる本格的な駆除作業が成果を挙げています。初年度の駆除数は640匹に上りましたが、年々半減していて、国内3例目の完全駆除が視野に入りつつあります。ただ、数匹でも残っていると再び繁殖してしまうため、県水産技術センター(甲斐市)の担当者は「産卵を防ぐことでリバウンド現象を抑え、完全駆除につなげたいです」と話しています。
「コクチバスの持ち出し禁止!リリース禁止!」。11月上旬、木々が色づく琴川ダム周辺の広場に設置された看板が目を引きます。コクチバス駆除に向けて県が設置したもので、釣った後のリリース(再放流)や持ち出しが禁止されていることを周知しています。違反した場合は外来生物法に基づき、個人で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金などが科せられることも警告しています。
県水産技術センターによると、コクチバスは北米原産。ルアー(疑似餌)によく反応し、強い引きであることから釣りの客から人気の高い魚として知られています。ただ、オオクチバス(ブラックバス)に比べて環境適応性が高く、湖や河川に定着してイワナやアマゴを捕食するなど、在来生物への被害が懸念されています。
国内では1991年に長野県内で初めて確認。山梨県内では96年に本栖湖で確認され、2002年までに完全駆除されました。
琴川ダムでは19年6月、釣り人からの情報でコクチバスが生息していることを確認。すでにダム内で繁殖している可能性があり、県漁連や峡東漁協、県水産技術センターなどが20年度から本格的な駆除作業に取り組んできました。
環境改善
20年度は4~10月にかけて潜水駆除を28回、陸上・船上駆除を21回実施し、刺し網で547匹、水中銃で48匹など計640匹を駆除。「正直、ここまで多いとは思っていませんでした。サイズもさまざまで、想像以上の数でした」。センターの谷沢弘将研究員は当時をこう振り返ります。
21年度は5~10月にかけて駆除作業を実施し、駆除数は324匹で前年度から半減。22年度の駆除作業も終了し、21年度の駆除数の半数以下になったそうです。
コクチバスの生息数が減ったことで目に見える成果もあります。駆除前の19年度は確認できなかった、アマゴやワカサギの幼魚が群れになって泳いでいるのが確認され、谷沢研究員は「生息環境が改善され、駆除の効果を実感しました。素直にうれしいです」と話します。
あと数年
駆除作業は順調に進んでいるが、谷沢研究員は「ここからが本当に大変です」と気を引き締めています。コクチバスの完全駆除に成功したのは本栖湖と中禅寺湖(栃木県)の2例のみ。理由は繁殖力の強さにあり、数匹でも残っていると再び繁殖してしまうといいます。
センターなどは来年度以降、産卵期を迎える6~7月の駆除に力を入れる方針で、谷沢研究員は「少なくともあと数年は必要。完全駆除に成功することで、『山梨では密放流ができない』ということを広めたいです」と話しています。
イベント名 | コクチバス完全駆除視野 再繁殖を警戒、正念場 |