和紙製造業の山十製紙(身延町西嶋、笠井伸二社長)などが、「洗える和紙」を共同開発しました。水に弱い和紙の耐水性を高める加工法を発見したことで実現。さらに天然由来の原料を使って和紙にはっ水加工を施す方法も見つけ、一連の工程で特許を申請しました。環境に負荷をかけない生分解可能な新素材として、アパレル業界を中心に売り込みを図っていく方針です。
プラスチックに代わる新素材を開発するため、笠井社長と、町施設「西嶋和紙の里」職員の望月秀一さん、県産業技術センターの芦沢里樹主任研究員が研究。約5年間かけて試作に取り組んできました。
すいた和紙を、植物由来の繊維・セルロースナノファイバーとカルボキシメチルセルロースを混ぜた液に浸し、いったん乾燥させてクエン酸につけ込むと、繊維がほぐれず、高い強度を保った和紙になることを発見。さらにセルロースナノファイバーとろうを高温で混ぜて乳化させ、完成した和紙に塗ると、均一にはっ水加工を施すことができることも分かりました。竹炭の粉末を混ぜ、抗菌や消臭効果を高められることも確認しました。
いずれの素材も天然由来の原料でできており、土に埋めた場合、数カ月で生分解されるといいます。新製法でできた和紙は「Washible(ワシブル)」と命名しました。
同社などは「高い強度と耐水性があることからプラスチックの代わりとしての用途が考えられます」と説明。近年、アパレル業界ではリサイクル可能な素材への関心が高まっていることから、今後は、衣類やバッグの素材としてアパレルブランドなどに売り込んでいく方針です。笠井社長は「環境負荷の低い、持続可能な新素材として、身延の和紙を国内外にアピールしていきたいです」と話していました。